HEMP HISTORY
麻の歴史を知る
CBDを知るにあたり、「麻の歴史」を学ぶことは欠かせません。
CANLIFEでは、日本の通史を研究している林 英次先生に「麻の歴史」についてお話を伺いました。
日本における
麻の発見例
日本では、福井県三方郡の鳥浜貝塚の縄文時代前期の文化層、 北海道江別太の縄文時代期層で麻が発見されています。
文献上では、『魏志倭人伝』に「いね・いちび・麻をうえ」と記載があり、 『後漢書倭伝』にも「土はいね・麻・いちび・くわによろしく」と記載があります。
また『魏志倭人伝』には、243年に倭王が帛布を献上した記録があります。 帛布とは絹と布のことであり、この時代背景を考えると、麻も献上していた可能性があります。
麻と神話
古事記には、アマテラス大御神が天岩屋戸に籠った際、 岩戸の前で行われた神事に麻が使われたと記されています。
また三輪山の神に関する記述では、麻糸が神の所在を示す重要な役割を果たしています。 このような文献からも、麻は古代から日本文化に深く根差していたと考えられます。
麻と税金
平安前期に編纂・施行された三代格式の一つである『延喜式』には、 中男作物、つまり租税としての麻の記載があります。
麻を貢進する国は全国で13カ国あり、その半数近くが関東地方でした。 特に武蔵・下総・常陸の3国は貢進量が多かったとされています。
のちに貨幣経済の進展や生産技術の発展により、 麻は商品作物としての栽培も促されていきました。
麻の用途 ― 布編
麻は『日本史広辞典』によると、狭義では大麻を指し、 広義では苧麻、亜麻、ジュート、マニラ麻なども含みます。
大麻や苧麻は全国で広く栽培され、木綿が普及する江戸時代までは、 衣料材料の中心を占めていました。
越後縮、奈良晒などの高級麻織物も生産され、 奈良晒は江戸時代には非常に高価なものとして扱われていました。
明治期以降は機械制麻紡績業の原料として亜麻栽培が導入され、 在来種である大麻・苧麻の栽培は縮小していきます。 しかし麻袋など、衣料用以外の需要によって新たな活路も見出していきました。
七味唐辛子にも使われてきた、麻の実。
麻の用途 ― 食編
江戸時代には七味唐辛子が開発され販売されました。 その原料には、生の赤唐辛子、煎った赤唐辛子、山椒、黒胡麻、陳皮、 芥子の実、そして麻の実が含まれていました。
現代においても七味唐辛子には麻の実が使われており、 麻は食文化の中にも自然に根付いています。
麻と神事
幣帛は、神に供えるものの総称で、一般的には繊維製品が中心であり、 その中には麻も含まれています。
麻は伊勢神宮が年末に授与する神札としても利用され、 本来は祓えの具でした。 罪や穢れを祓い、加護を得るものとして、神社の祭式や仏教行事にも使われてきました。
また、新天皇即位後に行われる大嘗祭でも麻は使われています。
日本文化に根付く、麻の葉模様。
麻について ― まとめ
古代から麻は、布、縄、漁網、蚊帳、鼻緒、神事、食文化など、 様々な場面で使用されてきました。
また、日本全国には「麻」の漢字を使用した地名や苗字も見受けられます。 これは、その土地に麻が身近にあったことを示していると考えられます。
歴史的見地から見ても、これほど多様に使用されてきた植物は類をみない存在です。
現代における麻は、食、衣類、神事だけに留まらず、 健康分野からバイオマスまで、余すことなく活用できる可能性を持っています。
麻は、古代から現代に至るまで、 日本文化と共に歩んできた究極のSDGs素材であると考えられます。
参考文献
- 福永武彦『現代語訳 古事記』河出書房新社 2003
- 石原道博『魏志倭人伝・後漢書倭伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝』岩波文庫 1985
- 埴原和郎『日本人と日本文化の形成』朝倉書店 1993
- 小野武雄『江戸物価辞典』展望社 2009
- 藤岡謙二郎『日本地理総説』吉川弘文館
- 三谷一馬『江戸年中行事図聚』立風書房 1988
- 『大和本草』国立国会図書館デジタルコレクション
- 新村出『広辞苑 第六版』岩波書店 2008
- 日本史広辞典編集委員会『日本史広辞典』山川出版社 1997